期末に在庫を確認しなくてはいけない理由

熊本 税理士 事務所
印紙の在庫と、使っている道具たち。

年末の慌ただしい時期がすぎ、年末年始はゆっくりと過ごされた方も多いかと思います。
個人事業主の場合は、1月から12月で事業年度を区切り、いよいよ確定申告を迎える時期です。

ところで、12月末の在庫の確認はされましたか?
仕入れた商品で未販売のもの、材料で未使用のものなどは、数量や金額の確認が必要です。
その理由を説明します。

1 在庫を考慮しない場合

【1年目】
1,000,000円の商品を仕入れて、そのうち500,000円分の商品を800,000円で販売したとします。

売上高800,000
仕入高1,000,000
差引-200,000

売上高から仕入高を差し引いた結果マイナス200,000円になってしまします。
実際は、500,000円分の商品が残っています。

【2年目】
残りの500,000円の商品を800,000円で販売したとします。

売上高800,000
仕入高0
差引800,000

仕入高がないため売上高がそのまま残ってプラス800,000円となってしまいます。

2年間を通算したら、合計600,000円となり同額ですが、違和感を感じませんか?
期間ごとに正確に区切らないと、業績が全く見えてきません。

2 在庫を考慮した場合

【1年目】

売上高800,000
仕入高-在庫(1,000,000-500,000)500,000
差引300,000

【2年目】

売上高800,000
1年目の在庫500,000
差引300,000

1年目、2年目ともに、500,000円の商品を800,000円で販売し300,000円の利益がでていることが分かります。

3 在庫を考慮しないとどうなる?

毎年の業績が把握できません。
商品をいくらで仕入、いくらで販売して、いくらの利益がでたのかが分からないので、今後の経営計画が立てられません。
商品の品数が多い場合や、商品を製造している場合など、原価管理ができていないと経営改善しようにも、どこに手を付けていいか把握できません。

また、融資をしている金融機関も業績が見えないので、前向きな融資ができません。
儲かっているかもわからないし、経営者がズボラだとすぐにわかってしまいます。

4 在庫の偽装は絶対ダメ

年末に思ったより利益がでて、税金の負担を減らしたい。
在庫を調整して利益を減らせばいいのでは?

でも、これは絶対ダメです。

【1年目】

500,000円の商品しか売れていないのに、税金を減らすために700,000円分の商品が売れたと偽装した場合。

売上高800,000
仕入高-在庫(1,000,000-300,000)700,000
差引100,000

【2年目】

売上高800,000
1年目の在庫300,000
差引500,000

1年目は800,000円の売上に対して原価が700,000円となり原価率は87.5%となります。
2年目は800,000円の売上に対して原価が300,000円となり原価率は37.5%となります。

明らかにおかしいです。
税金を先延ばしにして期間の利益を調整してしまうと、全く業績が見えなくなります。

5 本当は毎月在庫を確認した方がいい

実際は毎月在庫を確認して、月ごとの利益を把握したほうが望ましいです。
毎月把握していると、事業の軌道修正がすぐにできます。

在庫を見れば、売れ残っているものや、買いすぎに気がつくことができます。
これは中小企業にとってはとても大事なことです。
売上が伸びていないのに在庫ばかり増えてしまうと、売上による入金がないため資金繰りがキツくなってきます。

掛売上の場合も同様です。
仕入の支払いは1ヶ月後、売上の入金は3ヶ月後などよくあります。
売上の入金が仕入の支払いに間に合いません。
売上を見込んで仕入を増やしすぎると資金繰りはすぐにキツくなります。
さらに、取引先が倒産した場合などは、最悪です。
連鎖倒産しかねません。

在庫は常に把握し資金繰りに細心の注意が必要です。
些細な税金の増減を気にするより、業績の正確な把握が絶対に大切です。

(投稿者)

徳田貴久

徳田貴久税理士事務所

熊本県熊本市中央区大江6丁目20-6-2F

tokuda@tokudaoffice.com

徳田貴久税理士事務所
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