決して節税という言葉を信用してはいけない

徳田事務所は、「節税」を推奨しません。

なぜなら、世の中で使われている「節税」という言葉は、偽物だからです。

「節税」といわれている手法は、ほとんどが下記のとおりです。

① 税金は減っているが、お金がなくなっている。

② 一時的に税金は減っているが、先延ばしになっているだけ

③ 経費を適正に入れているだけ

それぞれ具体例を紹介します。

1 税金は減っているが、お金がなくなっている

税金は減っているが、結果お金が残っていない「節税」であり、もっとも残念なケースです。

結論をいうと、ただのお金を無駄遣いです。

無駄遣いとは、「金銭などを必要のないことや役に立たないことに使うこと。浪費。※コトバンク引用」です。

例えば、次のような例です。

・決算直前に、無駄にハイスペックなPCを購入したり、たいして必要のない消耗品を購入する

・値下がりする中古車を購入して減価償却を増やす

① 決算直前に不要な消耗品を購入した場合

100万円分の消耗品(固定資産を除く)を購入した場合、30万円程度の税金が減ります。

これを節税と言っている場合があります。

でも、実際は、100万円を無駄遣いして30万円の税金を減らしているだけです。

30万円の税金を納めていれば、100万円-30万円=70万円を手元に残すことができます。

② 値下がりする中古車を購入して減価償却を増やす

新車を購入すると、6年間で減価償却をして経費にしていきます。

中古車の場合は、経過年数に応じて減価償却の期間を短縮することができます。

例えば、4年落ちの中古車の場合は2年間で減価償却をします。

そのため、早期に減価償却という経費を増やすことができます。

ですから、2年間の経費を増やすだけの結果になり、3年目以降は減価償却は0円です。

新車の場合は、6年間で減価償却をします。

ですから、100万円の車を購入した場合、新車は6年間で経費にし、中古車は2年間で経費にするだけのことです。

そして、この中古車を売却する際、価値は減少しているので、結果、手元の資産は減少します。

車が必要だから購入する場合は、利用分の価値が減少するだけのことなので、ただの経費なのです。

節税ではありません。

2 一時的に税金は減っているが、先延ばしになっているだけ

税金は、原則1年区切りで計算します。

そのため、その年の税金が少なくなれば「節税」という場合があります。

ですが、その少なくなった税金は将来に支払うことになります。

つまり、「節税」ではなく「先延ばし」です。

例えば、次のような例です。

・価値が下がらない車の購入

・積立型の生命保険

・倒産防止共済

・家賃等の経費の1年分前払い

これらはすべて支払ったものが経費になるが、いずれ回収できるものです。

① 価値が下がらない車の購入

人気の車は、数年たっても価値が下がらないものがあります。

例えば、中古車を500万円で購入して、3年間で減価償却をした場合、500万円×30%=150万円の税金が減ります。

ですが、3年後にこの車を500万円で売却した場合、500万円の利益がでます。

この500万円については、150万円の税金がかかります。

毎年50万円ずつ納める税金を先延ばしにして、3年後に150万円の税金をまとめ払いするだけのことです。

車が大好きで、自分の趣味を兼ねて購入するのであれば、それはそれで良いと思います。

でも「節税」ではありません。

従業員に「社長は、会社の経費で高級車に乗っている」と思われて、労働意欲を低下させるのがオチです。

それでも良ければ、いいと思います。

逆に、取引先との関係上、一定ランク以上の車が必要なときや、従業員に「頑張れば良い車に乗れる」というイメージを持たせてモチベーションアップするようなケースもあると思います。

② 積立型の生命保険

積立型の生命保険は、解約のときに返戻金がもらえます。

この解約返戻金が利益になります。

①の車と同様、納税の「先延ばし」でしかありません。

さらに、積立型の生命保険は解約返戻率が高ければ高いほど、経費にできる割合は減少します。

③ 倒産防止共済

倒産防止共済は、40ヶ月経過すると、その掛金の元本が保証されます。

しかも、その掛金は全額経費になります。

ですが、解約した時に返ってきた掛金は利益になります。

つまり、これも「先延ばし」です。

※倒産防止共済については、解約に合わせて廃業して退職金を支払うなど、一定の戦略をとれば「節税」にすることもできます。

④ 家賃等の経費の1年分前払い

本来、経費は、支払った金額の内、サービスを受けた期間に対応する分しか経費にできません。

例えば、3月決算の法人で、3月に翌期1年分の家賃を支払った場合は、前払費用として処理し翌期に経費とするのが原則です。

ですが、継続的な取引を要件に、1年以内にサービスの提供をうける経費の前払は、その支払ったときの経費にしてもOKという取り扱いが認められています。

ですから、初めて1年分前払した年は、4月から3月に支払った1年分の家賃と、翌期1年分の家賃との合計、2年分の家賃を経費にすることができます。

ですが、結局は経費を前倒しにしているだけで、将来取り戻されます。

3 経費を適正に入れているだけ

実際に税金が少なくなるケースです。

経費にならないと思っていたが、実は経費にしていもいいことがわかって税金が減っただけのことです。

例えば、次のような例です。

・個人事業主で、事業と私生活との両方で使っているもの

・月末締め、翌月払いの経費

① 個人事業主で、事業と私生活との両方で使っているもの

事業に使っている割合を、きちんと説明できれば、按分して事業の経費とすることができます。

例えば、自宅兼事務所の家賃・水道光熱費・通信費、事業と私生活で使う車の経費です。

こういう経費になるものを丁寧に処理すると税金を減らすことができます。

これは適正な税金を計算することですので、「節税」ではありません。

② 月末締め、翌月払いの経費

経費は、実際にサービスを受けた期間の経費にするのが原則です。

ですが、面倒なので支払い時の経費にすることが多くあります。

この処理を、きちんとやると、初めてやった年だけ税金が減ります。

ですが、結局は翌年以降は、きちんとやっても同じです。

初めの年は、処理上、1ヶ月分多く経費が計上されます。

2023年から、未払の経費を丁寧に処理した場合、2022年12月~2023年12月分の経費が計上されます。

ですが、2024年からは2024年1月~2024年12月分の経費が計上されます。

4 「節税」をしない方がいい理由

「節税」は、①無駄遣い、②ただの先延ばし、といったものがほとんどです。

それでも②の「先延ばし」は、できればしたいと思うものです。

ですが、「先延ばし」にも、資金が必要です。

金銭の支払いをすることによって「先延ばし」することができるのであって、必ず資金の流出が伴います。

一時的な税の軽減のためにお金を使うより、納税をして資金の残高を増やして、手元資金を貯めることによって、強い会社を作りますし、安心して経営をすることができます。

また、この状態を継続すると、金融機関からの融資を受ける際、圧倒的に有利になります。

目先の「節税」に走るのはやめて、健全な経営を目指しましょう。

「節税」を推奨すれば税理士は儲かります。

「節税」をすれば、お互い良い気分になります。

ですが、これは大きな間違いです。

顧問料を安くして、「節税」により別方面から利益を得ている事務所もあります。

なぜ起業しようと思ったのか、目標は何なのか、見失わないようにしましょう。

(参考)

国税庁 No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合

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