インボイス制度で消費税の免税事業者に迫られる選択
2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。
もともと消費税の課税事業者である場合には、税務署に申請書を提出して今まで通り消費税を納税します。
やるべきことは、請求書に記載すべき項目に「登録番号」、「税率」、「消費税額」が追加するだけです。
登録番号は、税務署に申請書を提出すると通知にされます。
法人の場合は、「T+法人番号」です。
個人事業主の場合は、「T+13桁の数字」で構成された登録番号が付番されます。
問題は、免税事業者です。
免税事業者が、インボイス制度に対応した請求書(以下、インボイス)を発行するために、自ら消費税の免税事業者をやめて、課税事業者になる必要があります。
今まで、9,000,000円の売上に対して900,000円の消費税を上乗せして請求し、取引先から900,000円の消費税を受け取っても、その消費税を納税する必要がありませんでした。
ですが、2023年10月1日からは、「登録番号」の有無で、取引先から消費税の免税事業者か、課税事業者かが分かるようになるため、消費税分の請求ができなくなる可能性が高いと思われます。
そこで、改めて概要をまとめます。
1 消費税の納税義務
2022年の消費税を申告しなければいけないかどうかは、2020年(2期前)の売上高で判断します。
2020年(2期前)の売上高が1,000万円(税込)を超えていたら、2022年の消費税の申告が必要です。
この場合は2020年(2期前)が終わった時点で、2022年の申告の要否がわかります。
もう1つ申告しなければいけない場合があります。
次の2つの要件を満たしたときです。
① 2021年(前期)1月1日から6月30日までの売上高が1,000万円を超えた
② 2021年1月1日(前期)から6月30日までの 給与や賞与の支払額が1,000万円を超えた
この場合は2021年(前期)6月末時点で、2022年の申告の要否がわかります。
2 消費税の計算方法
売上のときに受け取った消費税から、仕入や経費で支払った消費税を引いた残額を納付します。
【例】
売上 9,900,000円(うち消費税 900,000円)
仕入等 7,700,000円(うち消費税 700,000円)
納付税額 900,000円-700,000円=200,000円
※以下、この例にそって説明します。
3 なぜ免税事業者が消費税分の請求ができなるなるのか
免税事業者は、インボイスを発行することができません。
その場合、免税事業者から商品を仕入れたり、サービスを受けた取引先は、仕入等の消費税700,000円を控除することができません。
ですから900,000円が納付税額になります。
課税事業者である取引先が、今まで通り、消費税込の請求を容認するとは思えませんよね。。。
インボイスを発行できないんだったら、消費税分の値下げを要求される可能性が高いです。
4 免税事業者がインボイス制度を選択した場合どうなるか
① 消費税の申告をしなければならない
② 手元に残るお金が減る
・①について
個人事業者の場合は、所得税の確定申告だけすればよかったのに、消費税の確定申告が必要になります。
消費税は、10%課税されるもの、8%課税されるもの、課税されないもの、など混在しており、帳簿や申告書作成は、かなり大変になります。
簡易課税制度という簡単な申告方法も選択できるので、いろいろ検討すればいいと思います。
ただし、選択の判断を誤ると税額が大きく変わり、納めなくていい税金を納めなければならなかったり、制度を理解するのに大変な手間がかかります。
・②について
9,900,000円-7,700,000円=2,200,000円が手元に残っていたのに200,000円の消費税を納付しなければならなくなるので、2,000,000円しか手元に残らなくなります。
もともと免税事業者は売上高10,000,000円未満の事業者なので、1割近い減少は致命的です。
5 判断はどうするか
取引先とよく相談してください。
取引先が、事業者である場合は、インボイスの発行を求めてくる可能性が高いです。
インボイスを発行しない場合は、おそらく消費税分の値下げを要求されるでしょう。
また、不動産賃貸業などは、契約書に5,000円(税抜)と記載されているので、免税事業者のままの場合は、値下げの要求をされるでしょう。
一方、飲食店などで、ほとんどのお客様が個人的に来店する人で、企業などとの取引(接待によくつかってくれる)がなければ、免税事業者を継続して問題ないでしょう。
(参考)
(投稿者)
徳田貴久税理士事務所
熊本県熊本市中央区大江6丁目20-6-2F
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