事業承継問題は「まやかし」だと思う

事業承継問題で廃業していく企業が増え、雇用が失われると巷では言われています。

中小企業庁によると、「2025年頃には、経営者の年齢が70歳以上の企業が約245万社となり、そのうちの約127万社が後継者不在で廃業・倒産する恐れがある。」と予測しています。

127万社の廃業に伴い、約650万人の雇用が失われ、約22兆円のGDPが消失し、大きな経済的損失を被るとのことです。

ですが、本当にそうでしょうか?

事業承継ができずに廃業する企業がある一方、次々に新しいビシネスが生まれ、新しい企業が誕生しています。

さらに、街の税理士として一番多く立ち会う案件は、全く別の問題で事業承継できずにいます。

1 事業に価値がない

そもそも、事業に価値がない。

継続して損益もトントンや赤字で、社長の年金で補填してなんと経営している企業などです。

こういうケースの多くは、多額の借入金があります。

ビジネスモデルも古く引き継いでも将来性が薄い。

こういった企業がかなりの割合で存在します。

まさに、事業の価値もなければ、引き継ぐ価値もないのです。

ですから、引き継ぐ人がいないので、事業承継もできません。

2 ノウハウを引き継げない

売上のノウハウを社長だけが持っており、さらに他社・他者に引き継ぐためには何十年もかかってしまうケースです。

そもそも、会社を大きくする気がなくて、社長と事務員やお手伝い数名程度で運営していることが多いです。

ですから、後継者も育ててないし、M&Aしようにもできない。

このような企業は、人気のない業種に多いです。

つまり、若者に担い手がいない。

多くの中小企業が、こと程度の規模で事業を行っているため、実際に廃業すると2~3名程度の失業者がでます。

ですが、社長が高齢で廃業する場合、従業員も高齢であることが多い印象です。

3 社長が辞めなくて後継者がウンザリする

社長が65歳を超える頃、後継者(子)は30歳から45歳になります。

この年齢ぐらいで、後継者(子)に任せて社長を交代しないと、後継者(子)はウンザリして事業承継を諦めて去っていきます。

後継者からすると、社長がいつまでも居座っており、口まで出してきたら面白くありません。

後継者は、30歳から45歳ですので、10年から25年ぐらいのキャリアを積みます。

場合によっては、同業の大手企業でキャリアを積んでいます。

社長のやり方に失望したりしています。

古さ・質・効率・コンプライアンスなど、かなり目についてしまうようです。

先代社長は、お得意様とニコニコ話しているぐらいがいいのです。

ただ、実情としては、社長の老後資金がなくて、引退したくてもできない。

退職金も出せない。

こういったケースも多いです。

4 おわりに

私の肌感覚ですが事業が順調で、担い手がいないケースは非常に稀です。

そして、その場合の問題点は人間関係です。

主に親子、労使、金銭面での折り合いです。

実態は、多くの企業が、前にあげたような問題で事業承継できない状態です。

また一方では、多くのビジネスや企業が誕生しています。

ですから、内心は「事業承継問題はまやかし」だと思っています。

(参考)

中小企業庁 財務サポート「事業承継」

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