粉飾決算は1度やったら終わる
新規契約の見込みで、クライアント候補の人と面談したり、決算報告書を見せてもらったとき、粉飾決算が発覚することがあります。
粉飾決算とは、赤字なのに黒字に見せたり、黒字の金額を上乗せすることです。
一般的に、利益に対して税金がかかるので、業績を悪くみせて税金を減らそうとする行為のほうが多いです。
中小企業の株主は、代表取締役が兼ねている場合がほとんどですので、上場企業のように利益を多く見せる必要はありません。
ではなぜ、中小事業者において粉飾決算をしてしまうのか。
また、粉飾決算をしてしまったら、どうなってしまうのか。
1 なぜ中小事業者の粉飾決算をするのか
一般的に、事業者は利益を多く出すと、税金も多くなるため、できるだけ利益を減らして納税額を減らそうと考えます。
一方、粉飾決算をすれば、利益が出ていないのに、利益が出ているように見せるので、納税額も増えます。(増えない方法もありますが・・・)
ではなぜ、中小事業者の粉飾決算をするのか?
理由は、利益を出さないと受注できない仕事があるからです。
例えば、公共工事です。
公共工事を受注するためには、経営事項審査を受けなければなりません。
その経営事項審査の結果によって格付けされ、その格付によって受注できる工事の規模が決まります。
つまり、経営事項審査の格付を上げないと、大規模な工事が受注できないのです。
この格付は、利益の額が大きく影響を及ぼします。
他にも、金融機関に業績をよく見せたい場合などもあります。
(経営事項審査とは)
国、地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする場合には、受けなければならない審査。公共工事の各発注機関は、競争入札に参加しようとする建設業者についての資格審査を行うこととされている。この資格審査にあたっては、欠格要件に該当しないかを審査したうえで、「客観的事項」と「発注者別評価」の審査結果を点数化して順位・格付けが行われる。このうちの「客観的事項」にあたる審査が「経営事項審査」です。
2 どのように粉飾するのか
(1)原価(在庫)の調整
本来、売上原価や工事原価であるものを、在庫や、未完成工事とすることによって、売上原価や工事原価を減らします。
(例)
実際: 売上高1,000,000円-原価800,000円=利益200,000円
粉飾: 売上高1,000,000円-原価700,000円=利益300,000円
これで、100,000円利益が増えます。
減らした原価100,000円は、翌期以降の原価にします。
(2)売上の前倒し
翌期の売上を、当期の売上にします。
(例)
実際: 売上高1,000,000円
粉飾: 売上高1,100,000円
これで、100,000円利益が増えます。
前倒しした売上100,000円分、翌期の売上が減少します。
(3)(1)と(2)を組み合わせる
(4)その他
売上と原価の両方を前倒ししたり、経費を調整するなど、様々な方法があります。
3 なぜ粉飾決算を1度やったら終わるのか
粉飾決算の多くは、利益の前倒しです。(収入の前倒し、原価・経費の先送り)
例えば、当期の利益が1,000,000円、翌期の利益が800,000円で、当期の利益を1,500,000円に粉飾した場合、翌期の利益のうち500,000円の利益を当期に前倒しすることになります。
この場合、翌期の利益は800,000円-500,000円=300,000円なります。
翌期の利益を、当期の利益と同じ1,500,000円に粉飾するためには、翌々期の利益を1,200,000円前倒しする必要があります。
このように業績が下降局面では、毎年粉飾する金額が大きくなっていきます。
そして、粉飾が必要な局面というのは、ほぼ間違いなく業績が下降局面なのです。
一度、粉飾に手を出すと雪だるま式に大きくなり、取り返しがつかないことになります。
粉飾は絶対せず、業績悪化と向き合い、事業計画の再策定や、事業規模縮小・立て直し、などに真摯に取り組むことを考えましょう。
(投稿者)
徳田貴久税理士事務所
熊本県熊本市中央区大江6丁目20-6-2F
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